中国では、2021年度から電力不足が顕著な問題となっています。主な要因としては、石炭の不足と価格高騰と言われており、特に製造業成長の抑制要因になっています。
各地に広がった電力制限
中国では、地方政府が電力の供給を抑制する動きが見られました。電力供給制限は、春頃から広東省など、特に製造業の多い地域から始まり、夏場には31省・市・自治区のうち北京市や上海市を含む20地域に広がりました。
発電量は通常、製造業の生産量など使用量に応じて受動的に決まるが、最近の中国では、逆に発電量の制限が製造業の生産量を抑制している状況も出てきています。多くの製造企業が、計画停電の通知を受け取り、工場の操業を調整した。なかには、事前予告なしに電力供給を遮断されたケースもあります。
日本企業の現地法人も例外ではなく、電力供給制限の影響を受けています。中でも日系自動車メーカーが多数集積する広東省においては、ジェトロの調査によると、回答企業の過半数が1週間の大半で8時から23時までといった長い時間帯で電力供給を制限された、との結果も出ています。自動車だけに限らず、電気機械、電子部品、プラスチック製品、金属製品などの企業で電力供給制限を受けたとされています。
電力不足の原因は何か
主要因として考えられているのは、石炭不足とそれに伴う石炭価格の高騰です。中国は未だに電力の多くを石炭に頼っています。そんななか、市場の石炭価格が上昇したことで、供給が需要に追い付かなかくなった、ということが主な原因として考えられます。
政府が電力の自由化を進めるなか、制度上では2020年から電力企業は電力価格を基準電力価格に対して10%を上乗せできるようになり、実質的には2021年から価格の上乗せが始まっています。しかし、原材料となる石炭価格の急騰で、電力企業は相次ぎ採算割れとなっており、地方政府は傘下の電力企業の生産調整を容認せざるを得ない状況にあると考えられる。
石炭不足の原因は何か
以下の3点が挙げられます。
政府による石炭生産の抑制
政府は、安全基準の強化や環境対策の強化、汚職摘発を理由に、内モンゴル自治区や山西省、陝西省などの地域で、炭鉱の稼働を停止してきました。国家統計局によると、2020年の石炭生産量は前年比+0.9%増の38.4億トンに留まっているとのことです。また、中国媒炭工業協会によると、2020年末時点で、全国の炭鉱数は約4,700カ所あるが、2025年までに約4,000カ所まで削減する計画なっています。
政府による石炭輸入制限
中国政府は、新型コロナの起源に関する調査を要求した豪州政府への反発から豪州産石炭の輸入を非公式に禁止した結果、かつて数千トン単位であった石炭輸入量はゼロとなった。一方で、国別輸入量で3年連続首位のインドネシアからの輸入量は横ばいで推移し、米国、南アフリカ、コロンビアからの輸入量が増加したものの、豪州産の減少分を相殺するには至らず、という状況でした。
国内の電力需要の拡大
2020年、各国がコロナ対策に苦しむ中、中国の経済成長率は主要国の中で唯一プラスとなりました。政府が、早いタイミングで活動制限を緩和し、インフラ投資や国有企業の設備投資を促進したほか、輸出も情報通信機器や医療用品を中心に大幅に拡大した結果、主要な石炭需要家である電力企業や鉄鋼業は、生産水準と原材料の調達量を大幅に引き上げました。
政府の対応
政府は電力・石炭不足の解消策を矢継ぎ早に打ち出しました。まずは、国家石炭備蓄の放出である。政府は2021年複数回にわたって500万トン以上の国家石炭備蓄を市場に放出しました。7月時点で、備蓄基地には約4,000万トンの石炭在庫があるとされています。
石炭生産の抑制も緩和され、政府は、期限切れを迎える炭鉱の1年間の延期によって、15カ所の炭鉱の生産を再開させました。また、内モンゴル・オルドス市で土地手続き不備によって生産停止していた炭鉱の土地使用を承して、38カ所の炭鉱の生産を再開させました。計53カ所の合計生産能力は昨年の全国石炭生産量の3%となります。さらにその後、追加で153カ所の炭鉱に生産を許可。
加えて、融資拡大などを通じて電力企業や石炭企業を支援しています。金融当局は、電力企業や石炭企業に向けの融資拡大を金融機関に要請し、政策支援によって石炭輸入量は大幅増加しました。これら措置を受けて、石炭在庫に持ち直しの動きがみられたことで、電力問題は徐々に回復していきました。
一方で、政府は一定の電力価格上昇を容認することで、電力需要の抑制を狙っています。政府は既に、電力企業が電力価格を基準電力価格に対して20%を上乗せすることを許可しています。エネルギー消費量の多い業種に対しては、さらに価格を上乗せすることもできます。なお、政府は家計や公共部門、電力消費量の少ない企業に対して電力を優先的に供給する一方で、電力消費量の多い企業の生産活動を抑制すると表明しています。このほか、政府は再生可能エネルギー事業に対する支援やロシアからの電力調達拡大などの措置も講じています。
今後の中国のグリーン電力
中国のグリーン電力については、中国の新エネルギー/コンサルティング・調査会社「インテグラル」の記事が参考になりますので、引用させて頂きます。