環境株式指数
中国共産党政権は気候変動対応に役立つ銘柄を集めた「環境株式指数」を創設すると発表しました。機関投資家などのESG(環境・社会・企業統治)投資をひき付ける狙いと考えられます。融資や債券市場だけでなく株式市場も通じて環境分野に多くの資金が流れるようにし、二酸化炭素(CO2)の排出削減に繋げたい考えです。
党と国務院(政府)がこのほど、生態保全や修復に関する制度改革の方針を公表しました。環境分野の資金調達やエネルギーの効率利用を促すため、市場機能をより活用していく姿勢を示した形です。
環境金融指数
株式マネーの誘導をめぐっては深圳と香港の証券取引所に2021年8月に、「環境金融指数」が上場しました。環境融資に注力する金融機関など50銘柄を集めたものとなっています。新たな環境株式指数の具体的な対象は未定ですが、気候変動対応に貢献する幅広い銘柄を組み込むと見られます。
グリーンボンド
中国政府は環境分野への融資や環境債(グリーンボンド)の発行を促してきました。中国の債券市場で国内外の事業を対象に発行した環境債の累計発行額は2020年に1兆1313億元(約19兆円)に達したとの試算もあり、2016年から5倍近く増えています。
グリーン融資
中国人民銀行(中央銀行)によると、クリーンエネルギー産業向けの融資残高は20年末に3兆元を超えた。エネルギー消費量が多い鉄鋼、石炭、非鉄金属の3業種向けの合計を上回っています。
CO2排出権取引
7月に始まった全国統一のCO2排出量取引も拡充します。先物取引も導入し、取引に厚みを持たせる予定です。林業や再生可能エネルギー、メタンガス利用といった事業も取引市場に組み込みます。これらの事業が実現したCO2の削減・吸収量を発電会社などが購入し、自社の排出分と相殺できるようにします。
制度改革では「エネルギー利用権の取引市場の建設を急ぐ」という文言も盛り込まれました。エネルギー消費量を企業などに割り当て、過不足分を取引する仕組みとなります。市場機能を活用してエネルギーの利用そのものを効率化させていく考えです。
中国のCO2排出量は世界の3割近くを占めています。習近平(シー・ジンピン)国家主席は「30年までにCO2の排出量をピークアウトさせ、60年までに実質ゼロにする」との目標を掲げています。同氏は、バイデン米大統領との電話協議で、米中が協力できる分野の一つとして気候変動対応を挙げました。
一方、課題としては、海外投資家は「先進国に比べて中国企業のESGへの取り組みは遅れているという評価が一般的」とみられています。というのも、環境債の発行額では世界上位に入るものの、買い手は中国国内の投資家が中心になっているからです。海外勢は米MSCIなどグローバルな指数を参照しており、開発する中国独自指数がどこまで利用されるかはまだまだ不透明ではあります。