海南島を取り巻く政策
自由貿易港に関する基本法
2021年6月、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は、最南端のリゾート地、海南島を自由貿易港にする基本法を可決しました。
同島に進出する国内外のファンドに国境をまたぐ投資を一部認めるという内容です。
そのちょうど1年前の2020年6月、中国政府は自由貿易港建設の総合計画を示しました。25年までに原則関税をゼロにし、企業や個人向けの税優遇も設けるという内容です。成立した基本法は自由貿易港に関する法的根拠となります。
金融政策
中国人民銀行(中央銀行)など金融当局は4月、海南島の金融開放に関する方針を打ち出しました。特定の外国ファンドに中国の未公開株への投資枠を与え、一定の範囲内で海外との自由な送金も認めるという内容です。海南島の企業に対し、外国銀行の融資など海外から調達できる資金の限度額を引き上げます。
海外への投資も促す狙いがあります。中国ファンドは当局から特別枠を得れば、海外の未公開株などに投資でき、全体の限度額は50億ドル(約5500億円)となります。新型コロナウイルス前は、資金流出を警戒して対外投資を規制してきましたが、人民元の国際化もにらみ規制を緩めます。
海南島の内需対策
医療ツーリズム
海南島の改革は、海外に流れていた需要を国内に引きとどめる狙いもあります。具体例としては、日本の一部都市などが中国人需要を取り込もうとしてきた医療ツーリズムが挙げられます。中国が国際会議を開いた海南省博鰲(ボーアオ)地区で、医療ツーリズムの受け入れ計画が進んでおり、東京ディズニーリゾート(テーマパーク部分)の20倍に相当する約2000万平方メートルの区域に、病院など16の医療関連施設を集積させる計画です。
すでに開設した総合医療センターは会員制で、リハビリ医療などを施し、者が長期滞在しても飽きないよう、書道や茶道など趣味のスペースを設け、衣装を借りてファッションショーを開ける舞台まで備えられています。将来的には「中国全土から富裕層が集まる」と話しています。
環境・グリーン
海南島での改革を先行事例とし、その成果を中国大陸に還元する狙いもあります。中国政府は同島を「クリーンエネルギー島」と位置づけ、30年までにクリーンエネルギーの発電容量を85%前後に高め、30年には旧来のガソリン車などの販売をやめる計画も掲げています。
不動産
不動産改革の拠点にする案もある。中国財政省などは不動産価格の高騰抑制や地方財政の安定のため、複数の都市で不動産税の試験導入を検討しています。
観光・ツーリズム
国内なのに免税店がある海南島は中国人旅行客を引き付けています。中国・海南島で高級ブランド品展が初めて開催され、化粧品大手の「資生堂」は中国市場初の商品を発表するなど、日本から89ブランドが参加しました。
今後の海南島の政策には注目です。